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魚都・氷見に、寒ブリシーズン到来

2024.12.26 | OTHERS

元日の地震から1年、復興の途上にある氷見の港に響く、競りの声。近年にない寒ブリの豊漁が、支援活動の後押しに。

駆け足で短い秋が過ぎると、氷見の里山にも目まぐるしく雪の季節が訪れます。冬の時期、北陸地方は崩れやすい空模様となりますが、なかでも11月下旬から12月にかけて低気圧や寒冷前線が能登半島付近を通過する時、富山湾には地響きのような雷鳴とともに強い風が吹き荒れ、海は大しけとなります。このような悪天候が続く頃に最盛期を迎えるのが、ブリ漁。「雷が鳴るとブリが捕れる」という漁師たちの言い習わしから、地元ではこの時期の雷を「ブリ起こし」と呼び、冬の風物詩となっています。

夏、北海道周辺の豊かな海で小魚を食べてまるまると太ったブリの群れは、11月から3月にかけて、九州の対馬海域や東シナ海など温かい場所をめざして日本海沿岸を南下。能登半島にぶつかった一部の群れは、そのまま富山湾へと入り込みます。この時期のブリは、春の産卵に備えてたっぷりと栄養を蓄えており、大きいもので重さ10kg以上にも成長。しかも、日本海の冷たい荒波にもまれたその身は引き締まり、脂がのった極上の味わいは「富山湾の冬の王者」の名にふさわしい風格を感じさせます。

なかでも氷見沖で水揚げされる寒ブリは、毎年高値で取り引きされるブランド魚「ひみ寒ぶり」として全国に知られています。その高い評価の背景には、伝統の「越中式定置網漁(※1)」によりブリを傷つけずに捕獲すること、水揚げしたその場で素早く大量の潮水(海水に氷をいれたもの)に浸けてブリを生きたまま気絶させる「沖締め」にすることなど、鮮度を維持し、長時間にわたってブリの品質を保つために培われた、氷見の漁師たちの知恵と技があります。

2024年は、元日の能登半島地震により波乱の幕開けとなりました。震度5強を観測した氷見市では、沿岸部を中心に大規模な液状化現象が発生。地盤の陥没、建物の倒壊、上下水道や電気の寸断といった被害に見舞われました。氷見漁港でも岸壁部分が大きく陥没するなどして、市場の機能が停止。1月4日の初競りも延期となりました。「ひみ寒ぶり宣言(※2)」が出され、観光業も書き入れ時となるこの時期、氷見市内では飲食店や宿泊施設の予約キャンセルが相次ぎ、損失額は1億5千万円に上りました。

震災からまもなく1年。季節は巡り、氷見の町も少しずつ復興が進んでいます。11月20日には今シーズンの「ひみ寒ぶり宣言」が出され、1日3000本を超える水揚げを記録するなど、久しぶりの豊漁で港は活気づいています。SAYSFARMでも、寒ブリなど脂がのった冬の魚にぴったりな2種類のロゼ、シャルドネなど、この時期ならではのワインの品揃えでお客様をお待ちしています。寒ブリで賑わう氷見の町とSAYAFARMに足をお運びいただき、復興に向けて歩み続ける今の姿をご覧いただければと思います。

 

(※1)氷見は、富山湾で江戸時代から400年以上続く「越中式定置網漁」の発祥の地。追いかけた魚を取りつくす漁法とは異なり、定置網漁では集まってくる魚を待ち受け、網に入る魚の2割程度のみを捕獲する。また、網そのものが漁礁の役割を果たし、網目の大きさによって漁獲量をコントロールするなど、次世代を見据えた「持続可能な漁法」として世界の関心を集めている。

(※2)漁協の関係者などでつくる判定委員会が、水揚げされるブリの大きさ、形、数量などを総合的に判断し、本格的な寒ブリシーズンの到来を宣言するもの。例年11月~2月頃までシーズンが続く。