SAYS FARM

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NOTE

氷見の風土が醸す、ワイナリーの風景。

2024.07.07 | WINERY

里山の自然のなかに、16年目の葡薔と薔薇が美しく調和。SAYSFARMが描き出す、氷見の風景。

5月中旬から6月下旬にかけて、SAYSFARMでは春の薔薇が見ごろを迎えます。現在、敷地内では一季咲き、四季咲き合わせて約80種類・100株の薔薇を育てており、春から秋までバラエティに富んだ花を長く楽しむことができます。薔薇は醸造棟の隣のガーデンのほか、敷地内の一部の畑にも植えられており、垣根仕立ての葡萄の樹のそばに、色とりどりの美しい花を見ることができます。

葡萄畑に薔薇が咲く景色は、各地様々なワイナリーで見ることができます。これはフランスのボルドー地方から広まったとされる風習で、農業技術が低かった時代、葡萄が感染するベト病やウドンコ病などのカビ系の病気に対して、同じ病気にかかる薔薇はセンサーとしての役目を果たしました。葡萄と薔薇は病気を発症する気象条件が一致しているうえ、薔薇の発症時期がわずかに早いことから、畑の防除の目安にしていたのです。

もちろん現代では、薔薇を病気のセンサーとして利用することはありません。それでも、世界中のワイナリーで今も薔薇を見ることができるのは、景観を美しくする目的のほかに、ワイン王国・フランスで受け継がれてきたワイン(葡萄)づくりの伝統に対する「敬意」を表すものではないかと感じます。2008年、氷見市余川の里山を切り拓いた最初の畑に、私たちは葡萄と共に数種類の薔薇の苗木を植えました。

葡萄畑は海を見下ろす丘の斜面に広がり、敷地内の道路からは、畑の中に鮮やかな薔薇を眺めることができます。登り口から120mほど進んだ丘の中腹にある畑の一角に、花弁先端の朱色から中心部の黄色へのグラデーションがひと際目をひく、大輪の薔薇があります。創業オーナーが自ら苗木を植え、こよなく愛したこの薔薇は、カベルネソーヴィニヨンの樹の隣で毎年美しい花を咲かせ、ワイナリーを見守り続けています。

2024年元日の能登半島地震では氷見市内も強い揺れに見舞われ、SAYSFARMではガーデンの石組みのゲートの一部が崩れてしまいました。目立つ被害が石組みくらいだったのは不幸中の幸いで、春にはいつも通り、お客様に満開の薔薇を楽しんでいただくことができました。次のシーズンは10月中旬から11月上旬にかけて。葡萄の収穫期が終盤を迎え、秋が深まりはじめたワイナリーに、ぜひお越しください。